エッセイ「飛ばす」

ふわふわと風にまかせてただよう風船を眺めていると子供の頃を思い出すが、観測のための気球はすこし違う。手を離れて大空に吸い込まれていくのは同じだが、飛ばすタイミングや飛ぶ高さをあらかじめ調節したり、いろいろなことを計算にいれたりと、科学的な目的をのせて空へ飛んでいく。気球を飛ばす現場と、気象観測の奥深さを綴ったエッセイ。

第2回 風を読む

バチバチバチバチ。第十居住棟の壁を叩くステイの音で目を覚ます。窓の外は真っ白だ。今日はゾンデ番、ちょっと憂鬱になる。 昭和基地の気象観測は24時間休みなしだ。このため、気象庁から派遣されている隊員が、日勤、夜勤、ゾンデ番…

第1回 高く高く飛ばしたい

昭和基地に行ったことのある人ならきっと、白い大きな気球が大空に吸い込まれていくのを見たことがあるに違いない。これは、上空の気温や湿度、風向風速を観測するために1日2回飛揚させる気象観測用の測器(レーウィンゾンデ)をぶら下…