多い時には月数回!? 世界各国で行われる国際会議やシンポジウムに参加している榎本副所長。今回は、F1モナコGPやリゾート地として有名なモナコ公国で開催された極地変化に関する科学のシンポジウム「北極から南極へ」に参加した時の様子について語っていただきました。
2024年2月22日と23日にモナコで、極地変化に関する科学のシンポジウム「北極から南極へ」の第2回目のシンポジウムが開催されたので参加してきました。2022年に、現モナコ公のアルベール二世(在位2005年7月12日~)が、アルベール二世財団を設立しており、モナコで極地に関するシンポジウムをひらきたいので、両極のSCAR(南極研究科学委員会)とIASC(国際北極科学委員会)の関係者に出てもらいたいという連絡がありました。
なぜモナコで極地のシンポジウムを開催するのか? と、IASCとSCARの関係者は驚きました。どのような考えをもった財団なのか調べると、アルベール二世は、世界各地の海に出かけた海洋学者で、モナコ海洋博物館と海洋研究所を作ったモナコのアルベール一世の考えを継承した大公であり、極地との関わりも多いということがわかりました。さらに、アルベール二世財団からは、両極を研究している若手が国際的な会合に出られる奨学金の提供をするなど若手を育成したいという考えがあることが知らされました。今回も科学的な応援をしてくれるということで、モナコからの提案を受けてIASCやSCAR、そして極地に関わる活動の代表者を集めて会議の開催に至ったんです。
私はIASCの副議長として、北極の科学に関する議論への参加ということで招待状がきました。他には、SCARとIASCの議長と副議長と幹部の人たち、そして先住民の人たち、あと、経済界からは、ダボス会議というスイスで開かれる経済会議の関係者、北極の経済フォーラムである北極経済評議会の代表、そういった人たちが呼ばれていて、総勢140名くらいが参加していました。テーマは「極域科学に対する、将来の共同研究を考える」なので、両極の若手研究者の集まりであるAPECSからも代表が呼ばれていましたね。
2023年11月にパリで開催されたPolar Summitでは、フランスのマクロン大統領が、ヒマラヤやアンデスなどの南極・北極の課題と関わりの深い寒冷域の人たちも呼びかけ、ネパールの研究機関ICIMODからヒマラヤの問題を伝えに代表が来ていました。ヒマラヤの山村の若者も来ていました。
しかし今回のモナコの会議ではアジアの研究者で参加したのは私一人だけ。アジアとの応答はまだ手薄なんですね。極域科学に取り組んでいるアジアからの研究者は誰もいないということにならないように、アジアから誰か呼ぼうとなった時に、私が呼ばれることが多いんです(笑)。
<次回は、2025年1月9日に公開予定です>
- 榎本浩之(えのもと・ひろゆき)
- 国立極地研究所副所長、北極観測センター特任教授。専門分野は雪氷学、気象学、リモートセンシング工学。1983年に北海道大学工学部を卒業後、筑波大学で修士号(環境科学)、スイス連邦チューリヒ工科大学で博士号(自然科学)を取得。国際北極科学委員会の Vice-President(副議長)も務めている。