多い時には月数回!?世界各国で行われる国際会議やシンポジウムに参加している榎本副所長。今回は、F1モナコGPやリゾート地として有名なモナコ公国で開催された極地変化に関する科学のシンポジウム「北極から南極へ」に参加した時の様子について語っていただきました。

今回は、壇上に上がってひとりひとり専門のことを発表する会議ではなく、4~5人が壇上に上がって、司会者が質問したり会場から質問を受けたり、自己紹介的な発表をしたりしました。班ごとに議論することが多かったですね。どの班(興味のあるテーマ)に入るかを自分で決めて選べるんですけれど、テーブルごとのテーマが違っていて、まとめ役が一人と、レポーター役が一人、記録係は英語圏の学生を当てていて、話してもいいけれど記録に集中してくださいと言われていましたね。班ごとに自由に1時間ほど議論し、どういった議論をしたかを発表しました。

大臣くらい責任ある人たちも同じ席について、どんどんやり取りするんですね。すごく突っ込んだ質問にも大臣は原稿なしで答えるし、どの国の人も通訳を入れずに英語でやり取りします。そのようなことをヨーロッパの人たちは当たり前にこなすので、きっと教育がされているのでしょう。

この10年くらいこういったスタイルの会議が多いです。効率がいいのかもしれません。ただ、台本はほとんどなく、その場で質問が出るから始終緊張しています。だからみんなフラフラになって疲れきって会が終わるんです。記録係の学生や若手は、数年後には会合の幹事や会話の中核になっているのもよくみかけます。

シンポジウムの終わりの時間帯に、ジャズ演奏などのパフォーマンスがありました。他にもコンテンポラリーダンスやいろいろなパフォーマンスがあって、クロージングとこのあとのそれぞれの国への移動に向けていい気分切り替えとなりました。

<次回は、2025年2月6日に公開予定です>

榎本浩之(えのもと・ひろゆき)
榎本浩之(えのもと・ひろゆき)
国立極地研究所副所長、北極観測センター特任教授。専門分野は雪氷学、気象学、リモートセンシング工学。1983年に北海道大学工学部を卒業後、筑波大学で修士号(環境科学)、スイス連邦チューリヒ工科大学で博士号(自然科学)を取得。国際北極科学委員会の Vice-President(副議長)も務めている。