南極にカメラを持っていく全てのプレイヤーに向けて。山口真一・第64次南極地域観測隊広報隊員が、極地での写真撮影のコツやエピソードをお伝えします。
「南極へ行ったら撮ってみたい」と思う風景の一つに、オーロラが挙げられると思います。写真は、カメラのセンサーに適量の光を取り込むことで記録されます。光の量が少ないと真っ黒に、多すぎると真っ白になります。
オーロラや星空などは、光量が少く暗い写真になりがちですが、①センサーの感度、②レンズの明るさ、③露光時間、によって明るく撮ることができます。①、②については、残念ながら性能の良いカメラ・レンズを買うしかないです。身も蓋もなくてすみません(苦笑)。夜の撮影に強いかどうかは、カメラメーカーによる違いもあるようでした。最近はスマートフォンのカメラでもセンサーの性能が良くなっているので、スマートフォンでもオーロラを取ることができます。機材の性能に左右はされますが、オーロラや星空を撮影するには③の露光時間が1秒くらい必要です。手持ちで撮影するとブレるため、三脚等でカメラを固定するのですが「しらせ」船上では船の揺れで写真がブレることが大半です。しかしトッテン氷河沖では「しらせ」は海氷中に停泊し、氷で船が固定されるため、ブレることなく長時間露光の撮影が可能となります。(焦点距離14mm、f/2.8、ISO 3200、露光時間25秒)
![](https://kyoku.nipr.ac.jp/wp-content/uploads/2024/03/船首側明暗比+ソフトライト合成-1536x1025.jpg)
露光時間25秒の写真を連続で約30分間撮影を行い、明暗比合成をすることで、星の軌跡を表現できました。
![](https://kyoku.nipr.ac.jp/wp-content/uploads/2024/03/1L5A4535-1536x1025.jpg)
波の穏やかな洋上では、オーロラで海が照らされている様子を撮ることもできます。ただし別メーカーのカメラを使っていた他の隊員の方がきれいに撮れていた印象です(苦笑)
(焦点距離14mm、f/2.8、ISO 12800、露光時間30秒)
![](https://kyoku.nipr.ac.jp/wp-content/uploads/2024/03/1L5A5780-1536x1024.jpg)
オーストラリア西海岸沖で撮影した星空。天の川もしっかり写っていますが…
(焦点距離14mm、f/2.8、ISO 12800、露光時間5秒)
![](https://kyoku.nipr.ac.jp/wp-content/uploads/2024/03/1L5A5780-4.jpg)
拡大するとVの字のようにブレているのが分かります。これは航行中の「しらせ」の揺れによるものです。
![山口真一(やまぐち・しんいち)](https://kyoku.nipr.ac.jp/wp-content/uploads/2024/03/プロフィール写真-2-256x256.jpg)
- 山口真一(やまぐち・しんいち)
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名古屋港ガーデンふ頭に係留している南極観測船「ふじ」の学芸員。2代目南極観測船の展示の企画や資料の保存、来館者のガイドなどに取り組んでいます。第64次南極地域観測隊に広報隊員として参加し、南極観測の公式記録の撮影のほか、ブログや交流サイト(SNS)の記事執筆などに取り組みました。